仙台高等裁判所 昭和30年(ネ)313号 判決 1956年3月17日
控訴人 佐藤トク
被控訴人 佐藤隆
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
本判決は被控訴人において金三万円の担保を供するときは仮に執行することができる。
事実
控訴代理人は「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決並びに保証を条件とする仮執行の宣言を求めた。
当事者双方の事実上の主張は、
控訴代理人において、
原審は本件につき昭和三〇年三月一七日口頭弁論を終結し判決の言渡期日は追つて指定すると云いながらこれが告知をしないまま同年六月一四日判決の言渡を為し同日控訴人に対して判決正本の送達をした。右判決手続が違法になされたものであるから原判決は取消を免れないと述べ、
被控訴代理人において、
本件記録によれば、原判決言渡期日が昭和三〇年六月一四日なることは同月一日控訴代理人に告知され、且つ控訴代理人は右言渡期日に右判決正本の請書を提出していることが明白である。右事実からすれば控訴代理人は言渡期日当日原審裁判所に出頭したものと認められるから適法な判決言渡期日の告知がなかつたとの控訴人の主張は理由がない。
と述べたほかは原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。
<立証省略>
理由
先づ控訴代理人の原判決言渡手続が違法なりとの主張について判断する。
本件記録に徴するに原裁判所は昭和三〇年三月一七日午前九時の口頭弁論期日に弁論を終結し、判決言渡期日は追つて指定する旨を告知したが、同年六月一日に口頭弁論期日外において判決言渡期日を同年同月一四日午後一時と指定し、当事者双方に対し普通郵便で右期日の呼出状を発送したことが認められる(記録第一四八丁乃至一五〇丁)。ところで言渡期日の指定も口頭弁論期日の指定と同じくこれを当事者に告知せねばならぬことは云うまでもないが(民事訴訟法第二〇四条、第一五二条、第一五四条)右告知を郵便によつてするときは郵便法にいわゆる特別送達として書留郵便によるべきものであるから(民事訴訟法第一六二条、郵便法第六六条)、原裁判所においてした前記普通郵便による言渡期日の告知は不適法であるといはなければならない。然しながら本件においては原裁判所で言渡期日の指定をしたことは前記のとおりであり、判決の言渡は当事者が在廷しない場合でもこれを為し得る(民事訴訟法第一九〇条第二項)のであつて判決の言渡そのものは当事者の弁論関与のほかのことであるから全然言渡期日の指定が為されなかつた場合とは異りこれが告知手続の瑕疵は判決内容に影響を及ぼすこともなく上訴の理由とならないものと思料する。
よつて本案について案ずるに、当裁判所も事実の確定並びに法律判断については原審と見解を同一にするから原判決理由中の記載をここに引用する。(当審において新たに顕れた全証拠によるも右認定を覆すに足らない)
従つて被控訴人の本訴請求中慰藉料金一〇万円及びこれに対する昭和二九年五月二一日以降完済迄年五分の割合による金員の支払を求める部分を認容した原判決は相当であつて本件控訴は理由がない。
当裁判所は右金員の支払部分に関する被控訴人の仮執行宣言の申立を相当と認めその保証額を金三万円とする。
よつて民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条、第一九六条第一項を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 板垣市太郎 檀崎喜作 沼尻芳孝)